PT理論の提唱者 W.G.ヒル
彼がぼくを「息子(My Son)」と呼ぶから、彼はある意味ぼくの父なんだけど、彼は、PT理論を提唱したPT界のグル、ウィリアム・ヒル博士(W.G.ヒル)だ(正確には、最初に提唱したのは彼の師、ハリー・シュルツだが)。
作家橘玲氏の作品「永遠の旅行者」には、以下のような一節がある。
1990年代に入ると、アメリカ生まれの国際投資家W・G・ヒルが、居住者とみなされない範囲で複数の国に滞在することで合法的無税化が実現できるとの理論を提唱した。(中略)理屈のうえではすくなくとも3つの国を順番に移動すれば、どの国の居住者にもならず、どの国にも合法的に税金を納めなくてもいい立場が手に入る。これが「永遠の旅行者」(Perpetual Traveler)で、その頭文字をとってPTと呼ばれる”
(橘玲「永遠の旅行者」幻冬舎 2005年)
愛称はBill(ウィリアムは「Bill」と呼ばれる)、または「じいちゃん」。
ぼくには当然ながら日本人の実の両親もいて、理由があって長い間Billには会っていなかった。理由のひとつは、Billが(当たり前のことだけど)PTであって、世界中回っていたことだが。Billは当時72歳、かなりの高齢なので、「じいちゃん」と呼ばれているが、ぼくにとってもおじいちゃんのようなものだ。理由の二つ目は、彼はぼくの実の祖父でもじいちゃんでもなく、ぼくがインターネットで彼を探し当て、彼に弟子入りをすることになるまで、彼の息子ではなかったからだ。
W.G.ヒルの欠点
そんな彼の欠点は、信じられないくらいにケチなことだ。とにかく、他人に金を払うことを極度に嫌う。そのケチぶりには、身内ながら引いてしまう。ただ、PT理論は、彼のそのドケチ根性から生まれたものだという意味では、転んでも「タダ」では起きないその性格にも尊敬すべき点がないわけではないが(本人は、自分のことを「Positive Thinker=PT」だと常々言っている。ぼくの解釈では、このプラス思考は、彼のあまりのケチさゆえに、損なことまでどうにかして得に変えようと、頭脳の200%を使って自分を騙す屁理屈を考えるしつこさのことだが。まあ、世界中に信者のいる「理論」を完成させて、その世界で「グル」とまで呼ばれるほどの存在になったのは、この並外れた「能力」のなせる業だと思うけれども)。
世界一フィーの高いコンサルタント
ちなみに、90歳を超える老齢の師ハリー・シュルツ(近いうちに彼についても詳しく書こうと思う)も、相当のドケチだ。ハリーは、世界一高いコンサルティング料金を取るということでギネスブックにも載った人物だ。
世界一高い料金ということでギネスに掲載されるということは、その料金を払うクライアントが実際にいて、そうしたクライアントからの収入によって何十年もコンサルティングビジネスを維持できているということだ。つまり、一発屋ではない。
そのハリーのドケチぶりは、ギネス級の料金からも明白だ。
彼らがドケチなわけ
そして、生物としての本能に負けて異性を好きになり結婚しても、あまりにケチであるために、しばらくすると妻を自分の収入をタダで吸い取る泥棒だとの観念に苛まれ、それだけの理由で離婚してしまう。
これはビルもまったく同じだ。そして二人とも、何回やれば気が済むの、というくらいに繰り返す。
ぼくから見れば、その繰り返しが最も大きい出費なのだが。
ただ彼らのような、世界一ケチな人々が、PT理論を発明し、完成させたというのはある意味納得できる。
自分の稼ぎから少しでも無駄に税金を払うことをギリギリまで回避し、離婚の度に多額の慰謝料を請求してくるex-wivesから狙われることになる財産を隠し、元妻たちに訴訟をけしかける弁護士たちを心底憎み(憎悪はなぜか弁護士一般に及ぶ。ぼくはそれゆえ弁護士になったというわけではない)、政府[ビッグブラザー]は独裁的で、ビッグブラザーらは自分たちの秘密とくに経済活動を監視して常に財産を狙っているというパラノイア的被害妄想狂で、他人からタダで昼食を御馳走になることが生き甲斐で
(「There never be a Free Lunch」ではなく、彼らの口癖は、「There never be anything but a Free Lunch.」だ。これを毎日、冗談でなく本気で言う…)、
何ヶ国ものパスポートを持ち(最近はそのほとんどを失効させている。たくさん持つことにあまり意味はないからだ)、銀行システムと送金システムに精通し(しかし両者とも高額の報酬は現金主義だ。ちなみにすべて前金制だ。「Money Talks or Bulls**t Walks」が口癖である。偏執狂・パラノイアなので、同じことばかり何回も言うから、口癖だらけだ)
ハリーのコードワード
ハリーはコードワード(暗号)を使って短く話す。もちろん携帯電話は使わない。盗聴のおそれがあるからだ。
ハリー:「ワシ(イーグル)はパスタでランデブー。12マイナス3」。
訳 :「わしじゃ、ハリーじゃ。ローマで9時に会おう」
.. シャレでもなんでもなく、本気だ。「ローマの、どこだ?」と思うが、毎回会う場所は同じなので誰も困らない。
有料のニュースレターを発行し(ハリーのNLは、世界で最初の充実した投資シグナルレターだ。無数のニュースレターの原型になっている。ビルも初めはハリーのHSLでPT記事を書いていた。今でもスイスに送金することで買える)、世界で最も税率の高い国のひとつであるスイスにほぼ無税で住んでいる(税金は払っていないというが、スイスは世界でも有数の物価の高い国なのに、とぼくは思う。買物で消費税を払うことを避けることはできないし。
ドケチの買い物嫌い
….それで、彼らは買物を極端に嫌う。
この買物嫌いも異常で偏執狂的で病的だ。スーパーに食材の買物に行くだけで、5分もすると不機嫌になる。6分経つと本当に怒り出す。
彼らの妻は落ち着いて食材を選べない。
それなのに、いくらお金がなくなるのか心配でならないのか、いくら使うのかを監視するためか、必ず買物には付いて行くのだ。
ぼくがミラノに行った日なども、
「何を買ったのだ?いくらした?…..高い!もうお金なくなったのじゃないのか?どうやって帰って来た?電車賃はいくらしたのだ?」と問い詰める。
おまけに、何を買ったか説明している途中で、「もう聞きたくない!気が狂う」と言って手で耳をふさぐ。
ビルはその後、カンピオーネからミラノに出ているバスの運転手に無理やり近づいて、どうやったんだかぼくが無料でミラノを往復する約束を取り付けて来た。ぼくはイタリア=スイスの新幹線の一等車や、メルセデスのタクシーをチャーターしてミラノに行くのが好きなので、そんなバスには乗るつもりはないが。
とにかく、PT理論の提唱者、W.G.ヒルってじいさんは、そのような超ドケチジジイなのだ。