[three-fourths-first]
娼館の女主人が…
ぼくが大きな事務所に初出勤した日、ボスに挨拶を済ませると、その事務所にたくさんいる秘書の親玉のような女性から、ぼくの秘書だという若い女性を紹介された。
なんかその親玉が、娼館の女主人とか女衒をイメージさせる怪しい雰囲気を持った女性だったので、そんな女主人が、入店したばかりの若い子をぼくに紹介しにきたみたいな感じだった。
ぼくに秘書がつくというのは、考えてみれば当然の話だったんだけど、そのとき紹介されるまで、そんなことはすっかり忘れていたものだから、ちょっとびっくりした。
ぼくに専属の秘書さんがついたのだ。
小学生の時からの願望だった
ぼくは小学生くらいの時から、自分も秘書がほしいという、今思えば末恐ろしい願望があった。仕事をするにあたり、有能な秘書がいたら、さぞかし捗るに違いないと考えたからだ。もちろん、当時は仕事などしていないけど、将来、自分が大人になったら、の話だ。
それで、秘書がつくとしたらどういう仕事があるだろうと考え、親と同じ、民間企業のサラリーマンでは無理だろうなというのはわかっていたので、弁護士とか大学教授とかだろうなとあたりをつけた(しかもそれ正解なんだよね)。
子どもの頃に、ぼくがなぜ秘書がいたら捗ると思ったかというと、
まず、秘書は、
・時間の管理をしてくれ、時間になったら、「先生、次は○○です」とやるべきことを教えてくれる。
これにより、自分では時間を考えて行動しなくてよいし、何をやるべきかについても頭を悩まさなくてよい。
彼女が言うとおりに(ぼくにとって秘書は常に女性だ)目の前に用意されたものをやっていれば間違いは起こらない。
・ぼくは、小学校時代はまだ律儀に年賀状なんかを出していたんだけど(中学以降は、毎年、ずっと、喪中だとかなんとか言って年賀状なんか出すことをやめてやった。近親者がいったい何人死んだんだ?)、一人ひとりに向けた本文のメッセージはよいとしても、宛名を書くのがものすごく苦痛だったから、秘書がいればこういう苦痛からも開放されるはずだと考えた。
こういう発想は今考えてもすばらしく正しい。ぼくは事務的な作業が恐ろしく苦手な大人に立派に成長したのだ。
そのような作業をぼくに代わってやってくれる存在は、ぼくには不可欠なのだ。
選択と集中、資源の効率的配分の観点からは、どのような仕事においても、そのクオリティを追求しようとすれば、得意な分野に全力を投入すべきなのは明らかで、ぼくの場合だと、ぼくはクリエイティビティを発揮する部分に集中し、苦手な事務的作業や時間管理はそれを得意とする人に担当してもらうのが合理的だ。
そのことを小学生の時から見抜いていたぼくは天才かもしれないね。
中学の時に考えたこと
中学生のころ、ぼくはどうしてもパソコンが欲しかったんだけど、それは学校の先輩の家のPC-9801で、大学生と高校生の先輩たちと一緒に徹夜でナンパのパソコンゲームをしたのがきっかけだった。
そのゲームというのは、女の子に話しかけ、お茶に誘ったり食事に誘ったりデートしたりしてく流れ。確か、ロールプレイングゲームのように、セリフを選択肢から選ぶんだったと思うんだけど、けっこう本当に会話してるっぽかった。そこから、「これをちょっと応用すれば、女の子としゃべったり、女の子が話したりってものができるんじゃないか」って考えた(ぼくの中高は男子校だったので、日常、女の子と会話する機会というのが極端に少なかったという環境……国立大学付属の共学の中学に行ったエミリーとは離れ離れになっていたからね……からも、そういう思考に走ったんだと思う)。
そうすれば、「ナリタくん、そろそろ数学の問題やる時間よ」とか、「今から10分休憩してそれから英語ね」みたいに、ToDo管理みたいなことをさせられるんじゃない?そうすれば、秘書がいるのと一緒じゃない?って思った。だから、パソコンがめっちゃ欲しかった。
これ、中2か中3のときだよ。1985年とかそれくらいの時代だよ。天才じゃない?
だってさ、今、スマホだとかMacのアプリでも、ToDo管理のアプリって人気でしょ?多くのビジネスマンにとって、マストアイテムだったりするよね。
ぼくは、計画を立てて実行するのがとっても苦手で、とてもキライなんだけど、要は自分で自分がやるべきことの管理をする他に、時間の管理もして、自分をコントロールしていかなきゃいけないのがすごくめんどくさいのだ。
何かをやってるときは時間のことは考えたくないわけ。休憩時間も、自分で決めて自分で時計見て「はい終了」って自分を律することにエネルギーを使うことに疲れるわけ。
誰かが、「はい、今から休憩」「はい、休憩終了」って言ってくれて、その通りするほうがラクなんだよね。たとえその時間の設定を自分でやったんだとしても。
(このことは、「ライザップ」の成功の秘訣とおんなじ発想なんだよ。勉強にしても仕事にしてもカラダ作りにしても、ペースメーカーがいるのといないのとでは全然違うんだ。やるべきメニューや時間を管理してくれる人がいるだけでどんなことでも達成できるんだよ。マジで)
結局、ぼくは中学の時の学校の成績がとても悪かったため(暗記ができなかったから)、親にパソコンを買ってもらうことはできなかった(いくらぼくが説明しても、「ファミコンとか買ってゲームばっかりするつもりなんでしょ」って言われて…。「ファミコンじゃないよパソコンだよ!」って言ってるのに(●`ε´●))。高校のときも買ってもらえず、初めてパソコンを買ったのは、大学院生になってから。その時ウィンドウズ95だった。
これは大きな痛手だ。ぼくが中学の時からパソコンをいじってたら(いじくってたら?いじくりまわしてたら?)すごいことになっていたはずだから。ほんと、親を恨むぜ。
ちんこ知能
ぼくがAIの研究もやってたことはちょっとプロフィールにも書いた。
ぼくに代わって、ぼくのように考える機械を作ること、つまり、ぼくのようにイヤらしい恥垢いや思考(まだ言ってんのか、しつこいな!)をするちんこ知能(もういいだろ)を開発できたらおもしろいなとか、
あるいは、
機械なんだから、ぼくに代わって超マジメなことを考えてもらって、ぼくは人間なんだからファジーにエロいこと考えるのに集中できるんじゃないの?って思ったわけだ。
そんな集中してエロいことばかり考えなければならない理由はあるのか、って問題が残るんだけどね。
しかし実際、若い頃、エロ画像とか動画とかを求めて、世界中の(?)インターネット上を毎晩、一晩中サーフィンしまくっていたから、そのときなんか、「ああ、このエロサーフィンに毎晩注ぐ時間とエネルギーを、すべて勉強に注ぎ込んでいれば、オレはいったいどんだけすごいことになっていただろうか?だってサーフィンとかビデオ鑑賞ばっかやって、ぜんぜん勉強してないのにこれなんだから。
たとえばオレが女の子だったら、こんな海でもないところで毎日毎日何時間もサーフィンなんかしていたはずがないから、女の子に生まれてただけでも、オレはとんでもなくすごいことになっていたに違いない。女の子だったら、「オレは」なんて言わないはずだが…」
って思ったものだ。
だから、ぼくに代わって、イヤらしい思考をするちんこ知能か、
ぼくに代わってマジメなことばっか考える人工知能を開発する必要があったわけだ。ぼくにとっては。
小学校、中学校なんかの頃に、そんなふうに秘書だとか、人工知能の必要性を考えていたぼくが大人になって、まったく流行っていない中、ロボティクスで高名な教授の研究室に入って、人工知能の分野で博士研究をするようになったのって、自然だろ?
人生初の秘書さんがついたときの話に戻ろう
さて、話はぼくに人生初の秘書さんがついたときのことに戻る。
ぼくのように人生のおける秘書の重要性を意識していた場合に限らず、多くの男性にとって、自分に秘書がいるのって憧れじゃない?
とくに美人秘書だったりとかしたら……。もう、ポルノとかAVのタイトル炸裂だわね。
そう、ぼくは、ある朝、怪しい娼館の女主人のような秘書の親玉から、若い美人の秘書さんを紹介され、その日からぼくの専属の秘書さんがついた。人生初の、憧れの秘書さんだ。たまらない…
もう、その秘書さんときたら、美人なうえに、控えめで、頭も良く(大学院まで出てる)、なのに自分は秘書という仕事に命を懸けてます、っていう意気込み。
なんでも言ってください、っていうから、ぼくは恐縮しながらも、
「私は朝起きられないので、朝起こしてくださいますか?」
と頼んだら、次の日から毎朝、決まった時刻に
「先生、おはようございます」
と携帯メールが来るようになり、5分以内にぼくからの返信がない場合、電話を掛けてくれるようになった。それによってぼくは遅刻をせずにすむようになった。
もっとも、これについては、元妻が「え?あなた結婚してるのにそんなこと頼んだの?私が何もしない人みたいじゃない」
とクレームを入れてきた。
「いやいや、君、ぼくを起こしてくれたことないじゃない?ぼくより寝てるわけだし。司法試験のときだって、女の友達に頼んでたから、電話かけてくれて、間に合ったんだぜ。君はぼくがいつ試験かも知らなかったじゃないか」
「だって、そんなことどうでもいいもん」
コラーッ
って感じでしょ?
司法試験の合格発表の日、合格していたぼくは【たいした話じゃないから恐縮だけど】一応、いちばんに伝えておくべきだよね、と思って元妻に電話して、受かってたよと伝えたところ、
「ふーん。今忙しいから。またね」
ギャーッ やられた~
って感じでしょ?
うちの妻、出てって正解だ。
…という感じで、ぼくの秘書さんは、毎朝モーニングコールをしてくれるようになり、また、その朝のメールの中で、その日の予定も伝えてくれるようになった。
これって、ものすごく助かる。
しかも、この秘書さん、ぼくについてとにかく何でも褒めてくれる。
「先生のブーツ、素敵です」
「先生の字、ほんとに素敵です」
「朝起きられなくても素敵です。私が起こしますから」
「ファイリングなんか先生なさらないでください。私の仕事ですから、私におっしゃってください。でも、素敵です」(何がだヨ!)
ポルノとかAVの世界だよね。やばいわ。
言っとくけど、これ、妄想じゃないんだよ。ホントにこんなんだったんだぜ。
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