「安藤忠雄メソッドという概念」について の概念、みたいな

「安藤忠雄メソッドという概念」について の概念、みたいな

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「安藤忠雄メソッド」?

ワードプレスのプラグインを探しているときに訪れたサイトで、超ナットクの、おもしろい記事を読んだ。「安藤忠雄メソッドという概念について」という記事。
「安藤忠雄メソッド?何それ?」でしょ?知りたいでしょ?
ちょっと長くなるけど引用するね。

で、安藤忠雄のような才能を持った個人がビジネスを展開していく際、まず考えられるのは、「そのブランドを使って商売していくこと」です。安藤忠雄事務所に建築を依頼すると、安藤忠雄クオリティの建築物ができると考えるのは人の性。しかし、安藤忠雄がすべての仕事をやっていると、最大でも24時間×365日しか働けません。時給が65,535円だとすると、となると、最大でも4億しか稼げません。これは一般ピープルとしては多いかもしれませんが、日本を代表する建築家としては「えっ、それだけ?」となってしまいます。あと、なんというか、それだったら自分で借金をしてその建築物を立てて売った方が儲かる程度の額になってしまいます。そこで取るべき戦略を2つにわけると、「単価を上げる」「販売数を増やす」という2つの戦略が考えられます。
(中略)
さて、どちらの道にもそれぞれの難しさがあるので、ブランディングを展開します。
まず、安藤忠雄事務所を構え、人を雇います。もちろん、昨日まで建築をやっていなかったとか、そういうレベルの人を雇うことはできませんが、早稲田の建築科を出たけれども大成建設で不本意ながら現場監督をやっていた第二新卒とか、ポテンシャルのある人材を雇い、トレーニングをします。その後、彼がある程度の経験を積んだら、安藤忠雄は彼を「我が事務所のエース」として顧客に紹介します。もしかしたら、「自分にはない若いセンスを持ってる」ぐらいいうかもしれません。それで、時給65,535円を請求します。実際に彼の時給は3,000円なので、安藤忠雄事務所には62,535円が残ります。社員が一人なら、こんなことをしているとリスクにしかならないでしょう。しかし、社員が10人いたらどうでしょうか? 彼らが辞めてしまったり、顧客をかっぱいでしまったり、ブランドを毀損して時給6,500円にしてしまうかもしれないリスクを負ったとしても、手元には以前より多くの売り上げが残ります。

というわけで、安藤忠雄メソッドについて説明させていただきました。

安藤忠雄メソッドという概念について | 高橋文樹.com

「安藤忠雄メソッド」という「概念」

高橋文樹.com
高橋氏のサイト、高橋文樹.com

上記引用のサイトを運営してて、当該記事を書いたのは、小説家として活躍なさってる高橋文樹さんという方。小説家業の一環として、電子出版のレーベルともなっている株式会社を経営されており、その会社では、その他に、ご自身の才能・技能を活かしてウェブ開発の業務もされているらしい(会社のウェブサイトの制作実績などを見ると、とてもおもしろい。この方、かなりのやり手だ)。おそらく実質的には高橋氏おひとりで経営されているに近い規模の会社なんだろうと思う。この話がぼくにしっくりきたのは、弁護士の事務所のやり方(もちろん定評があってコンサバティブな事務所ね)のやり方とほとんど同じだから(あ、安藤忠雄メソッドってのは、おそらくこの高橋氏の造語で、安藤忠雄が上記のような金額を請求するとかあのようなセリフを言うとかは、たぶん氏の想像/創作です。この話はメタファーなんだよね。このポストのおもしろいところは、タイトルが、「安藤忠雄メソッドという概念について」となっているところ。安藤忠雄メソッドについてじゃなく、「という概念」について論じられているんだよ。そこが氏の発想言葉の選び方のおもしろくて頭良いとこなんだよね)。

ぼくが安藤忠雄メソッドにナットクの理由

ぼくは弁護士の仕事って、職人的技能に近いと思ってる。まあ、ぼく自身の仕事の仕方からすると、という面が大きいんだけど、クオリティを追求しようと思うとそうなる(クオリティといっても本人の自己満足的なものにすぎないのかも…とも思ったりもするのだが)し、ぼくが尊敬する師匠クラスの弁護士たちも、やはり個人的な職人的技能で仕事していたように思う。
だから上記引用の

安藤忠雄は彼を「我が事務所のエース」として顧客に紹介します。もしかしたら、「自分にはない若いセンスを持ってる」ぐらいいうかもしれません。それで、時給65,535円を請求します

って部分なんか、ぼくはまさにこのまんまのセリフでボスから顧客に紹介されたことが何度もあるから笑っちゃった。けどボスは、自分に代わるような、顧客に自慢げに紹介できるような若手の人材を雇わないといけないわけで、「果たして将来、自分にもこんなことができるだろうか」といつも思っていた。その頃ぼくも若くて、他人の力を信用できなかったからかな。まあ、でも完全に自分のコピーじゃなくてもいいんだよね。能力が高ければ、スタイルは違っても高いクオリティのサービスを提供できる…ってことが、そのあと徐々に分かったが。この点で伝統工芸とは異なるね。別に技能のすべてを継承しなくてよいわけで。

秀逸なメタファー

ところで、高橋氏がこの安藤忠雄メソッドを持ち出すのは、「一定の技術なり才能なりをもった個人がその力を金に変えようとするときに直面する難しさ」について説明するためだ。仕事を受ければ受けるだけ収入は得られるはずだが、個人が受けてこなせる仕事の数量には限界があり、世界クラスの才能を持つからといって、何十億・何百億と収入を増やせるわけではないのだ。その技能や才能に基づく仕事が属人的な形態のままでは。この属人性による制限を緩めスケールするための方法が安藤忠雄メソッドという概念だということなのだろう。
高橋氏の話のおもしろく秀逸なところは、この概念の説明に安藤忠雄メソッドというメタファーを用いたことだ。
ぼくは基本的にはメタファーは好きではないんだけど、それは上手にそれを使う人があまりいないからかも知れない。ホッブズやロックなど法哲学寄りの人たちなんかは、メタファーによる説得を「非理性的なものでばかげたもの」だと考えていたようだから心強いんだけど、これは少数派で、一般的にはアリストテレス以降現在までずっと重要な修辞法のひとつだという扱いだ。「メタファー」とかいって、いかにも重要なことのように言ってさ。単なる「たとえ話」だろうに。

しかしながら、初めてメタファーの意義に言及したといわれるアリストテレスだって、「最も偉大なのはメタファーの達人である」つまりメタファーを上手に使うことには意義があると言っているのであって、ヘタなたとえ話や、よけいに意味が曖昧になるたとえ話を推奨するものではないはずだ。
そんなわけで、メタファーの上手な使い手であれば賞賛される。ぼくだってそれには反対じゃない。高橋氏の安藤忠雄メソッドという概念は、あまりにその技能・才能が属人的であるため【スケールできず】、世界クラスの才能にもかかわらず、むしろそれゆえに得られる収入に自ずから限界がある場合の譬えとして見事だ。おそらく誰もが同じイメージを描くことが可能な譬えだからね。

氏の経歴にみえる氏の才能との関係

これは高橋氏が小説家であることとも関係するかも知れない。
ぼくがコテコテの(しかもヘタな)メタファーが好きでないのは、実社会で使うとうさんくさいからだけど、小説は、全体的にメタファーであってこそ意味があると言っていいくらいなんじゃないかな?
(ぼくは大学レベルで文学というものを勉強していないからこれ適当に勘で書いてるだけなんだけど。トンチンカンなこと言ってたらごめんなさい)
もしかしたら、読み手に「これは○○のメタファーとしての××なのでは」と思わせるような…できれば幾通りかの解釈の余地がある…小説が、優れた小説とされ、ほんとにメタファーかどうかは関係なかったりするかも(たぶんそうだ。テクストからだけでは、それが真実メタファーとして書かれたものかどうかは分かるはずがないからだ)とにかく、小説とメタファーはおそらく不可分だ。

サイトの著者略歴によれば高橋氏は、大江健三郎のようになることを目指し大江氏と同じ東大仏文科を卒業。東大在学中に幻冬舎の文学賞をとって文壇デビューし、その後も新潮新人賞など数々の賞を獲得されたという実力派だから、メタファーなどお手のものなのかも知れない。考えてみれば、おそらく高橋氏の食べるための仕事だろうウェブ開発はロジカルな部分とクリエイティブな部分からなっているはずだし、本業である小説というものも、まったくの荒唐無稽な話でない限りロジカルな面とクリエイティブな面を持つはずで、高橋氏の記事をいくつか読んで感じる頭の良さとおもしろさは、彼が論理性と創造性で優れているからなのかもね。

氏の学歴からくる氏の暴言のおもしろさ

そしてぼくがめちゃくちゃおもしろいと思ったブログ記事のくだりが以下の部分だ。先の安藤忠雄メソッドの話とベースが似ていて、高橋氏が経営する個人経営に近いウェブ開発会社が仕事を請ける場合の苦悩(に近い悩ましい問題)を説明する記事なんだけど、氏の暴言が超ウケる。

中小企業の直請けがめんどくさい点中小企業でITが専業でない場合、ほとんど社長とやり取りすることになるのですが、まれにキチ◯イとしか思えない人が混じってるんですね。そういう人と話すのって人生の無駄なので、僕は正直に「なに言ってるかわからん」と言うわけです。それでも話が進まない場合は学歴をフルに利用し「僕は東大出てるんで世の中の平均よりはだいぶ頭がいいはずです。わりとコミニュケーション能力もある方です。その僕が理解できないということは、あなたの言っている話は重要な情報が欠落しているという可能性はないですか? それともハーバード大とかMITの博士課程を出ているような人しか理解できないほど高度な話をしているんですか? とても御社の企業規模がそうだとは思えないんですけど」とか答えるんですけど、そうなるともう「人はこれほど激高できるのか」というほど怒りだすんですね。で、これで喧嘩別れになるかどうかが分水嶺となります。「こんなんでコイツ生きていけるのか?」と危惧する方もいるかと思いますが、世の中の中小企業の社長というのは色々と辛酸を舐めているのでこれぐらいでもぜんぜん大丈夫です。みんなタフですよ。

悪口をいう人は多いが、僕は大手代理店やSIerの靴の裏を舐めたい | 高橋文樹.com

そんなこと実際に言っちゃえる人いるんだ!(笑)僕は東大出てるんで世の中の平均よりはだいぶ頭がいいはずです。わりとコミニュケーション能力もある方です。その僕が理解できないということは、あなたの言っている話は重要な情報が欠落しているという可能性はないですか? それともハーバード大とかMITの博士課程を出ているような人しか理解できないほど高度な話をしているんですか? とても御社の企業規模がそうだとは思えないんですけどって!

すげーな。

「こんなんでコイツ生きていけるのか?」と危惧する方もいるかと思いますが

ってそりゃ危惧するわ!けどかっこいいね。高橋氏。さすが破滅派というだけのことはある。
ぼくもクライアント企業である中小企業の社長とか、有名人の大物連中だとかそういう顧客の中にはそりゃあいっぱいいたですよ。すごいキ○○○のが。でもそれ実際はぼくの顧客じゃなくてボスのお客さんだからさすがに言えなかったわ(危険人物のぼくだって一応、いい子のフリをしようと思えばできるのだ)。だからなんとかなだめすかしたり、番頭さんクラスと仲良くなって専らそっちから必要な資料や情報もらったりして進めてた。でも、このセリフ言えたら気持ちいいだろうな。ふつう、東大出てても一生の間にこんなセリフ吐かずに終える人がほとんどだろうけど(うちの家族にも東大卒がいるが、まっとうな会社勤めだったからwこんなこと言わなかっただろうな)、せっかく東大出たんだから一度でいいからこれ言ってみたいだろうね。

もっといえば、これ言わずに生きてくんだったら東大出た意味ほとんどないくらいじゃないか
みんなどうせ心の中では「僕は東大出てるんで平均よりだいぶ頭いいしコミュ能力もある方だからこの僕に理解できないレベルとすればハーバードかMITの博士くらいのはずだけど……」って思ってるはずなんだからね(笑)口に出すかどうかだけの違いだ。
ぼくは自分の顧客に対しても言ったことないな(ぼくが東大じゃないからではなくw)。自分の顧客だから、そもそもそういう相手を顧客にしないことができるからね。ぼくはとにかく、仕事を断る鬼みたいな人間だったから(仕事の鬼ではなく)。要は自分の仕事のクオリティを実現できないような仕事はぜったいに受任しない。
そういう場合に限って、というか、人間って不思議なもので、断れば断るほどやってくれと言って聞かないんだけどね。ぼくは受け付けなかったけどね。
まあ、高橋氏も、言ってみれば自分の仕事ができるかどうかを重視していて、それができないんだったら切ってくれていい、と思う相手にそれをぶつけてるってことだろうね。で、ぶつけてみた方が意外とうまくいくと。それって一理あるよね。

まあとにかくこの人は東大だからっていうんじゃなくて、頭のいい人だと思うわ。むしろ東大っぽくないくらいかもね。この暴言も計算されてて(微妙な間合いを読んでて)、器用なんだよね。その点で東大っぽくない。これなら小説も上手に書けちゃうから、軽く新人賞とかとれるのもわかるわ。本人もそれ自覚しているんじゃないかと思われる。ビル常駐の警備員のアルバイトで暮らしたり、作家や漫画家の卵なんかと北千住でトキワ荘っぽいルームシェアやったりという、いかにも小説家の青春みたいな時代を過ごしたのも、ある意味わざとに違いない。それがまさに小説のネタにもなってるみたいだしね。要領もいいよね。
そもそも小説家として生きていっていることだけでもホントにすごいことだ。ウェブ制作やプラグインの開発でも、発注者である取引先に、あんな暴言を吐けるくらいに結果出してるわけだしね。

とかいって、勝手に引用したり散々勝手なこと書いてるけど、氏の小説、ほとんどがKindleUnlimitedにあるというのに、失礼ながらぼくはまだ一冊も読んでない(もっと失礼なこととしては、ぼくは高橋氏とまったく面識も接点もなにもないのだ。ぼくが氏のブログに行き当たり、記事を読んだに過ぎない)。言い訳としては、Unlimitedでマックスの10冊まで借りてて、どれか返却しないと新しいの読めないんだわ。すみません今度読むです。
氏の小説のAmazonのレビューを見ると、そのレビューがまた賢そうなこと。感心してしまった。おれあんなレビュー書けないわ。もともと書かないんだけど。レビューの表現や内容が高度なことからすると、書いたのはきっと氏の東大時代の友人か知り合いに違いない。

ぼくはこの破滅派・高橋氏とか先日書いた記事(iPad Pro 10.5を外付けキーボードと使うデキるアプリがキーボード問題を一挙に解決」で触れた、アラン・ケイを引用するプログラマー氏と同様、自分より若くてデキるやつとかカコイイやつが好きなのだ。

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ぼくはアフィリエイトなんかはやってないし、それに日本にいないから、ブログで好き勝手言えるのだ。

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